世界の災害対策システム市場の規模と成長セグメント、国土強靱化20兆円との接続による日本企業の機会を解説する記事
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世界の災害対策システム市場 — 2026年23兆円規模へ、AI予測・気候適応・レジリエンスが牽引する成長構造と日本企業の機会

2026年6月15日7分で読了

気候変動による極端気象の常態化と、世界各地での大規模災害の頻発を背景に、「災害対策システム(Disaster Preparedness Systems)」のグローバル市場が着実な拡大を続けています。国内の防災情報システム市場が1,500億円規模で語られる一方、世界全体の災害対策システム市場はその100倍を超える2,000億ドル超の巨大マーケットです。本記事では、The Business Research Company・MarketsandMarkets 等の市場調査をもとに、グローバル市場の規模感と成長率、AI災害予測・気候変動適応・災害対応ロボティクスといった有望セグメント、そして国土強靱化に約20兆円を投じる日本市場・日本企業にとっての事業機会を、調査名・年・通貨を明示して整理します。

世界の災害対策システム市場の拡大と防災インフラ投資をイメージした俯瞰ビジュアル

1|世界の災害対策システム市場の現在地 — 2026年に2,343億ドルへ

1-1 2025年2,173億ドル、2026年2,343億ドルへ拡大

The Business Research Company(TBRC)が2026年1月に発行した「Disaster Preparedness Systems Global Market Report 2026」によると、世界の災害対策システム市場は2025年の2,173.5億ドルから2026年に2,343.6億ドル(CAGR 7.8%)へ拡大すると見込まれています。同レポートはさらに、2030年に3,191.6億ドル(2026〜2030年のCAGR 8.0%)に達すると予測しています。市場の中核は、緊急・一斉通報システム、監視システム、安全管理システム、地震警報システム、災害復旧バックアップシステムといった構成要素です。

項目内容(TBRC 2026年1月発行)
2025年 市場規模2,173.5億ドル(USD)
2026年 市場規模2,343.6億ドル(USD)
2025→2026年 CAGR7.8%
2030年 予測規模3,191.6億ドル(USD)
2026→2030年 CAGR8.0%
最大地域 / 最速成長地域北米(最大)/ アジア太平洋(最速)

※出典:The Business Research Company「Disaster Preparedness Systems Global Market Report 2026」(2026年1月発行、予測対象2025-2030年、通貨USD)リンク

1-2 調査会社で異なる「数え方」を正しく読む

市場規模の数字は、調査会社・基準年・対象範囲の定義によって変わります。たとえば Grand View Research は、別の定義のもとで2030年に約3,080億ドル(2023〜2030年のCAGR約8.5%)に達すると見込んでおり、TBRC の3,191.6億ドル(2030年)とは基準年も区分も異なります。市場規模を語るときは、必ず「どの調査会社の・何年版レポートで・どの年の・どの通貨の数字か」をセットで確認することが重要です。本記事では原則として TBRC の2026年版(USD)を主軸に据えています。

※出典:Grand View Research「Disaster Preparedness Systems Market Size Report, 2030」リンク

2|成長を牽引する2つのドライバー — 災害多発とレジリエンス重視

2-1 自然災害の頻発が「備え」を恒常需要に変えた

市場拡大の最大の駆動力は、自然災害そのものの頻発です。TBRC は災害対策システム市場の主要な成長要因として「自然災害の頻度増加」を挙げています。緊急事態データベース(EM-DAT)の集計では、2023年に世界で399件の自然災害が発生し、86,473名が犠牲になったと記録されており、気候変動・人間活動・自然現象の複合により、災害はより頻繁かつ深刻化しています。大規模災害が報じられるたびに、政府・自治体・企業の備えへの投資が押し上げられる構造です。

2-2 「レジリエンス」が企業評価と資本市場の指標になる

レジリエンス(用語解説)
災害や危機に直面しても被害を最小限に抑え、素早く回復し、事業や社会機能を継続できる「強靱さ・回復力」を指します。近年は防災インフラだけでなく、企業の事業継続力や非財務情報の評価軸としても重視され、災害対策システムへの投資を後押しする概念になっています。

レジリエンスは単なる防災用語にとどまらず、企業価値や資金調達を左右する評価軸へと広がりつつあります。気候適応とレジリエンス関連技術への投資意欲も高く、気候テック領域では2024年の案件の4分の1超(28%)が気候適応・レジリエンス関連だったとの分析もあります。災害対策システムは、こうした「投資されるレジリエンス」の中核インフラとして需要が積み上がっています。

※出典:PwC Japan「2024年版 気候テックの現状」(気候適応・レジリエンス投資28%)リンク

AI災害予測・データ解析による防災テクノロジーをイメージしたビジュアル

3|有望セグメント① — AI災害予測と気候変動適応

3-1 AI災害対応・緊急管理市場は2026年に1,669億ドル

災害対策システムのなかでも成長が際立つのが、AIを活用した災害対応・緊急管理の領域です。The Business Research Company の2026年版レポートによると、AI災害対応・緊急管理市場は2025年の1,529.5億ドルから2026年に1,669.3億ドル(CAGR 9.1%)へ拡大し、2030年には2,247.3億ドル(2026〜2030年のCAGR 7.7%)に達すると予測されています。AIによる被害予測プラットフォームは、被害評価の精度向上・復旧プロセスの加速・総合的なレジリエンス強化を目的に開発が進んでいます。

項目内容(TBRC 2026年版)
2025年 市場規模1,529.5億ドル(USD)
2026年 市場規模1,669.3億ドル(USD)
2030年 予測規模2,247.3億ドル(USD)
CAGR2025→2026年 9.1% / 2026→2030年 7.7%

※出典:The Business Research Company「Artificial Intelligence In Disaster Response And Emergency Management Global Market Report 2026」(2026年発行、通貨USD)リンク

3-2 気候変動適応市場は2030年に404億ドル規模へ

気候変動への「適応(アダプテーション)」も、災害対策と隣接して伸びるセグメントです。MarketsandMarkets が2026年4月に発表した調査によると、世界の気候適応市場は2024年の232億ドルから2030年に404億ドル(CAGR 9.7%、予測期間2024-2030年)へ拡大すると見込まれています。同調査では、洪水・熱波・干ばつなどの早期警報システムが2030年まで第2位の市場シェアを占めると分析されており、衛星観測・地上センサー・無人航空機(UAV)といった監視技術の高度化が成長を支えています。

※出典:MarketsandMarkets「Climate Adaptation Market」(2026年4月17日発表、基準年2024年・予測2030年、通貨USD)リンク

4|有望セグメント② — エネルギーレジリエンス・ロボティクス・スマートシティ防災

4-1 災害対応ロボティクスという成長分野

被災現場での捜索・救助、危険物の取り扱い、被害状況の監視を担う災害対応ロボティクスも、今後の有望セグメントです。DataHorizzon Research の調査では、災害対応ロボット市場は2024年の約21億ドルから2033年に約45億ドル(2025〜2033年のCAGR約8.5%)へ成長すると見込まれています。気候変動で災害が頻発するなか、人が立ち入れない危険区域での作業を代替・補完する手段として需要が高まっています。

セグメント市場規模・成長率調査会社
AI災害対応・緊急管理2026年 1,669億ドル → 2030年 2,247億ドル(CAGR 7.7%)TBRC(2026)
気候変動適応2024年 232億ドル → 2030年 404億ドル(CAGR 9.7%)MarketsandMarkets(2026)
災害対応ロボティクス2024年 約21億ドル → 2033年 約45億ドル(CAGR 約8.5%)DataHorizzon Research

※出典:DataHorizzon Research「Disaster Response Robot Market Size, Growth and Analysis Report - 2033」(基準年2024年、通貨USD)リンク

4-2 エネルギーレジリエンスとスマートシティ防災

この章の要点

  • AI災害予測は2026年に1,669億ドル規模、災害対策システム全体のなかで最大級のセグメント
  • 気候適応市場は2030年に404億ドルへ、早期警報システムが中核を担う
  • 災害対応ロボティクスは2033年に約45億ドル、危険区域での作業代替で需要拡大
  • 停電に強い分散型電源・スマートシティ防災は、災害時の都市機能維持を支える隣接成長領域

停電や断水に強い分散型電源・蓄電を組み込む「エネルギーレジリエンス」、センサー網と都市データを使って被害を最小化する「スマートシティ防災」も、災害対策システムと地続きの成長領域です。これらは個別の製品市場としてだけでなく、都市・施設インフラ全体を「災害に強くする」ソリューションとして統合的に需要が伸びていく見込みです。

5|日本市場・日本企業の機会 — 国土強靱化20兆円との接続

5-1 国内防災情報システム市場というサブセグメント

グローバル市場が2,000億ドル超で語られる一方、日本国内に目を向けると、防災情報システム・サービス市場は1,500億円前後のサブセグメントとして堅調に伸びています。世界市場の成長トレンド(AI予測・気候適応・レジリエンス重視)は、当然ながら日本国内の需要構造にも波及しており、国内市場は世界市場の縮図として、同じドライバーで拡大していると捉えられます。

5-2 国土強靱化 第1次実施中期計画 約20兆円という追い風

日本企業にとって最大の追い風は、政府が2025年6月6日に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」です。同計画は2026年度から5年間でおおむね20兆円強規模、114施策の事業計画を示しており、世界市場で伸びるセグメントと国内の公共投資が直結する構図になっています。5本柱の内訳は下表の通りで、ライフライン強靱化や新技術活用が、AI予測・センサー・ロボティクスといった成長領域とそのまま接続します。

5本柱事業規模のめど接続する成長セグメント
防災インフラの整備・管理5.8兆円監視・早期警報システム
ライフライン強靱化10.6兆円エネルギーレジリエンス・通信
新技術の活用0.3兆円AI災害予測・ロボティクス
官民連携強化1.8兆円BCP・防災ソリューション
地域防災力の強化1.8兆円スマートシティ防災・通報

※出典:自由民主党「第一次国土強靱化実施中期計画」(2025年6月6日閣議決定、114施策・おおむね20兆円強)リンク/建設通信新聞「政府/強靱化実施中期計画を閣議決定、114施策に20兆円強」(5本柱内訳、2025年6月)リンク

5-3 建設・防災・テック事業者にとっての参入余地

世界トレンドと国内投資の交点を狙う
世界市場で伸びるAI災害予測・気候適応・ロボティクス・エネルギーレジリエンスは、いずれも日本の国土強靱化の5本柱と接続します。海外で実証されたソリューションを国内の公共・民間案件に橋渡しする、あるいは国内で磨いた技術を成長するアジア太平洋市場(TBRC が最速成長地域と指摘)へ展開する——双方向の事業機会が広がっています。建設・防災・テックの各事業者にとって、世界市場の成長セグメントと国内20兆円規模の投資が交わる領域こそ、次の参入余地です。

気候変動と災害の頻発が続くかぎり、世界の災害対策システム市場の拡大は当面途切れにくいと考えられます。国内の公共投資という確かな足場と、グローバルで伸びる成長セグメントをどう接続するか——その設計が、日本企業のレジリエンス事業の競争力を左右します。

まとめ

この記事のポイント

  • 世界の災害対策システム市場は2025年2,173.5億ドル→2026年2,343.6億ドル(CAGR 7.8%)、2030年3,191.6億ドル(CAGR 8.0%)へ(TBRC 2026年1月版・USD)。北米が最大、アジア太平洋が最速成長地域
  • 成長ドライバーは「自然災害の頻発」と「レジリエンスの投資指標化」の2点。2023年に世界で399件・86,473名の災害被害(EM-DAT)
  • 有望セグメントはAI災害予測(2026年1,669億ドル)・気候変動適応(2030年404億ドル)・災害対応ロボティクス(2033年約45億ドル)・エネルギーレジリエンス・スマートシティ防災
  • 国内防災情報システム市場(1,500億円前後)は世界市場の縮図。同じドライバーで拡大
  • 日本企業の最大の機会は国土強靱化 第1次実施中期計画(2025年6月閣議決定、5年間おおむね20兆円強・114施策)との接続。世界の成長セグメントと国内公共投資の交点が参入余地

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WiZNAVI 編集部

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