南海トラフ臨時情報が出たら企業は何をするか 「注意」「警戒」別に打ち手を一望する
南海トラフ臨時情報が出たとき、企業の対応は「避難か継続か」の二択ではない。この記事は経営者とBCP担当の方にむけて、臨時情報の区分ごとに企業が検討すべき打ち手を、ひととおり見わたせるかたちで整理する。読みおえるころには、自社の立地と業種に合う対応の組みあわせが見えてくるはずだ。結論を先に言う。区分・立地・業種で打ち手は変わる。だから平時に「自社版の段取り」を決めておくことが要になる。
臨時情報は4区分 まず自社がどの段階にいるかを知る
臨時情報は、南海トラフ沿いでいつもとちがう現象が観測されたときに、大規模地震の可能性が相対的に高まったことを知らせる情報だ。気象庁が発表する。ここで大事なのは、これが地震の予知ではない、という点だ。あくまで起きやすさが相対的に上がった、という確率の話にすぎない。だから「来る・来ない」で身構えるより、起きてもこまらない段取りを整えるほうが現実的だ。
区分は4つある。調査中、巨大地震警戒、巨大地震注意、そして調査終了だ。調査中は、異常を観測して評価をはじめた段階をさす。警戒と注意は、評価の結果として出される。調査終了は、ひととおりの評価がおわった段階だ。自社がいまどの段階にいるかで、とるべき行動のおもさが変わる。まずは区分の意味を社内でそろえておきたい。
この情報は机上のしくみではない。2024年8月8日、日向灘でM7クラスの地震がおき、運用開始後はじめて巨大地震注意が発表された。呼びかけは8月15日に終わっている。すでに一度、現実に出ている情報なのだ。次に出たときにそなえ、自社の動きを決めておく意味は大きい。
区分で行動が変わる 「注意」と「警戒」のちがい
警戒と注意では、もとめられる動きがはっきりことなる。
巨大地震警戒は、想定震源域のなかでM8.0以上の地震がおきた、いわゆる半割れのケースだ。地震がおきてからの避難では間にあわない地域の住民は、1週間の事前避難をおこなう。そのあとさらに1週間は、日ごろの備えの再確認をつづける。企業は、対象地域の従業員の事前避難をどう支えるかをかんがえるひつようがある。
巨大地震注意は、M7.0以上などの一部割れのケースだ。基本は日ごろの備えの再確認に、すぐ逃げられる態勢の維持や非常持出品の携帯といった、特別な備えがくわわる。注意のときの事業の基本方針は「可能なかぎり継続」とされる。一律に操業を止めることはもとめられていない。下の表で、区分ごとの状況と企業対応の重点をまとめた。
| 区分 | 状況 | 企業対応の重点 |
|---|---|---|
| 調査中 | 異常を観測し評価を開始 | 情報の収集と社内連絡の準備 |
| 巨大地震警戒(半割れ) | 震源域内でM8.0以上 | 事前避難の支援+備えの再確認を継続 |
| 巨大地震注意(一部割れ) | M7.0以上 など | 備えの再確認+すぐ動ける態勢の維持 |
| 調査終了 | 評価が終了 | 平時の備えにもどす |
事業者がやることは大きく8つに整理できる
内閣府のガイドライン事業者編は、企業が検討すべきことを大きく8つにまとめている。もれなく押さえるための見取り図になる。
①ひつような事業をつづけるための措置だ。情報発表後の1週間を基本に、出社できない従業員のはあく、ひつような人員の再配置、代替の人員や取引先の確保をかんがえる。②日ごろの備えの再確認。③施設と設備の点検。④従業員などの安全確保。⑤ふだん以上に警戒する措置。⑥地域への貢献。⑦情報の伝達。⑧これらを実施する要員の確保だ。
8つを一度にかんぺきにやろうとすると動けなくなる。だから自社にとっておもい項目を先に決める。たとえば製造業なら設備の点検と人員の再配置、来客のおおい施設なら点検と安全確保が先に立つ。優先順位をつける作業こそ、平時にやっておく価値がある。
立地で「確実にやること」が変わる
8つのうち、どれをかならずやるかは立地と施設の性質で層が分かれる。ガイドラインはここを明確にしている。
すべての企業は、日ごろの備えの再確認をおこなう。不特定多数が利用する施設は、施設と設備の点検をおこなう。事前避難の対象地域内にある企業は、従業員などの安全確保をおこなう。いずれも「確実に」と念を押されている項目だ。自社がどの層に当てはまるかで、外せない打ち手が決まる。立地別に整理したのが次の表だ。
| 立地・施設の性質 | 確実に実施すること |
|---|---|
| すべての企業 | 日ごろの備えの再確認 |
| 不特定多数が利用する施設 | 施設・設備の点検 |
| 事前避難の対象地域内の企業 | 従業員などの安全確保 |
自社が事前避難の対象地域に入るかどうかは、立地で決まるおもい分かれ目だ。対象地域内なら、従業員の安全確保が義務にちかいおもさでもとめられる。まずは自社の所在地が対象に当たるかをたしかめておきたい。
自社の打ち手を平時に組みあわせておく
ここまで見たとおり、臨時情報への対応に単一の正解はない。区分で動きが変わり、8つの検討事項があり、立地で外せない項目が決まる。だから「情報が出てからかんがえる」ではおそい。
ガイドラインも、臨時情報が出たときの対応はあらかじめ決めておくことが、きわめて有効だとする。あわせて、こうした段取りは一度きめて終わりではない。人の異動や拠点の変更があれば、対象地域の判定も初動の担当も変わるからだ。年に一度は見なおしたい。自社の区分ごとの初動、優先する検討事項、対象地域かどうかの確認。この3つを平時に紙へおとしておくだけで、情報が出た日の混乱は大きくへる。SUP+30 編集部は、この見取り図を自社版の段取りに置きかえる作業を、いちど平時にやっておくことをすすめたい。備えの設計の深掘りは、別の記事でもあつかっていく。
出典
- 気象庁 南海トラフ地震臨時情報について: https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/nteq/bosai.html
- 内閣府 南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン(改訂概要・令和7年8月): https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/kaiteigaiyou.pdf
- 内閣府 同ガイドライン(検討ガイドライン概要・事業者編の検討事項): https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/gaiyou_guideline.pdf
- 内閣府 同ガイドライン 本文: https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/pdf/honbun_guideline2.pdf
国土強靭化に関わる政策・制度・予算を、建設/不動産/施設運営の経営判断に使える形で読み解く編集チーム。
