シード・プランニングの市場調査によると、国内の防災情報システム・サービス市場は2026年に約1,352億円に達する見込みです(2021年:約1,039億円)。さらに2027年には1,533億円へと成長が続くと予測されています。背景には自然災害の頻発化・激甚化への対応需要と、AIや行政DXの普及があります。本記事では、この成長市場の全容と参入チャンスを解説します。
1|市場規模の推移と成長予測
1-1 2021〜2027年の成長軌跡
| 年度 | 市場規模 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 約1,039億円 | — |
| 2022年度 | 約1,096億円 | +5.5% |
| 2023年度 | 約1,160億円 | +5.8% |
| 2024年度 | 約1,230億円(推計) | +6.0% |
| 2026年度 | 約1,352億円(予測) | +年平均約5% |
| 2027年度 | 約1,533億円(予測) | +13.4% |
※出典:シード・プランニング「防災情報システム・サービス市場 2026年に約1,352億円市場に発展」調査を見る
さらに最新(2025年版)の調査では、集計対象を拡大した結果、2025年度の市場規模が約2,153億円と推計されています。定義の見直しにより市場規模の数字が大きくなっていますが、成長トレンド自体は変わっていません。
※出典:PR TIMES「防災情報システム・サービス市場の実態を調査/2025年度の国内市場は2,153億円に」プレスリリースを見る
1-2 成長の背景:3つの構造的要因
- 自然災害の頻発化・激甚化:気候変動の影響で豪雨・台風の規模が拡大し、行政・企業の防災投資需要が高まっている
- 行政のDX推進:国・地方自治体の防災情報システム更新・クラウド化が加速している
- AIとセンサー技術の実用化:AI・IoTを活用した新サービスの市場参入が増加している
2|市場を動かす3つの技術トレンド
2-1 AI河川水位予測
河川カメラ・センサーのデータをAIで解析し、数時間後の水位上昇を予測するシステムが自治体に普及しています。国土交通省のデータ連携基盤との組み合わせで、早期避難判断の精度向上に貢献しています。実測データと機械学習モデルを組み合わせることで、従来の数値予報モデルより高精度な予測が可能になっています。
2-2 SNS投稿分析サービス
災害時にSNS(X、LINE等)に投稿される情報をリアルタイムで収集・分類し、被害発生箇所を自動でマップ表示するサービスが登場しています。行政の公式情報では把握しきれない「生の被害情報」を補完する手段として、自治体や報道機関での採用が進んでいます。
2-3 防災情報の統合プラットフォーム化
気象情報・ハザードマップ・避難所情報・緊急速報・SNS情報などを一元管理できる統合プラットフォームへの需要が高まっています。住民向けアプリとの連携や、多言語対応(訪日外国人向け)も重要な機能として求められています。
3|市場の主なプレイヤーと構造
3-1 大手ITベンダーと通信キャリア
NTTグループ、富士通、日立製作所、NEC等の大手ITベンダーと、NTTドコモ・KDDI等の通信キャリアが、自治体向け防災情報システムの主要プレイヤーです。既存の行政系システムとの統合・連携案件で強みを持っています。
3-2 防災特化スタートアップの台頭
AI・センサー・データ分析に特化した防災テックスタートアップの参入が増えています。行政の調達改革(スタートアップとの随意契約・実証実験)の推進も追い風となっており、大手ベンダーとの協業や独自ソリューションでの市場開拓が進んでいます。
3-3 住民向けB2Cサービスの拡大
「ヤフー防災速報」「Safety tips」「NHKニュース・防災」など、住民が直接使う防災アプリ市場も成長しています。位置情報と連動した個人向け避難ガイダンスや、プッシュ通知による早期警戒サービスは、広告モデルやプレミアム課金モデルでの収益化が進んでいます。
4|ビジネス参入のチャンスはどこにあるか
4-1 地方自治体のシステム更新需要
2000年代初頭に整備された自治体の防災情報システムが更新時期を迎えており、クラウド化・AI化への移行需要が大量に発生しています。地方の中小ITベンダーにとっても、地域に密着した提案で受注できる案件が増えています。
4-2 民間企業のBCP対応ニーズ
大手企業を中心に、BCP対策の一環として社内専用の防災情報システム(気象アラート・安否確認・被害状況収集)を整備する動きが加速しています。SaaS型のBCP支援システムの需要も拡大しています。
4-3 インフラ管理との融合
道路・橋梁・水道等のインフラ管理システムと防災情報システムの融合が進んでおり、「インフラの健全性をリアルタイムでモニタリングし、異常を事前検知する」ソリューションが新たな市場を形成しています。
5|まとめ
この記事のポイント
- 防災情報システム・サービス市場は2026年に約1,352億円、2027年に約1,533億円へ成長予測(シード・プランニング調査)
- 成長を牽引するのは自然災害の頻発化、行政DX、AI・IoTの実用化の3要因
- AI河川水位予測・SNS分析・統合プラットフォーム化が主要技術トレンド
- 地方自治体のシステム更新、企業のBCP対応、インフラ管理融合が主な参入チャンス
防災テック市場は今後も安定的な成長が見込まれます。市場の最新動向は強靭化Bizナビで継続的に追いかけていきます。
強靭化Bizナビ編集部
国土強靱化・防災ビジネスに特化した専門メディア「強靭化Bizナビ」の編集チーム。政策動向、市場分析、補助金情報、導入事例など、ビジネスパーソンの意思決定に役立つ情報を配信しています。