防災ITシステムと市場拡大のイメージ
市場・ビジネス

防災関連情報システム市場は2027年に1,533億円規模へ — 年6.5%成長の背景と参入チャンス

2026年5月17日7分で読了

防災市場の中でも、情報システム・サービス領域の伸びが目立っている。ビジネス・ブレークスルー大学大学院の市場分析によれば、防災に関連する情報システム・サービス市場は2021年の1,050億円から2027年に1,533億円まで拡大する見通しで、年平均成長率6.5%という安定成長が予想されている。本記事では、この成長の背景と、システム・SaaSベンダーが取れる参入アングルを整理する。

市場規模の現在地 — 1,050億円 → 1,533億円

2021年〜2027年の6年間で、防災情報システム市場は約46%拡大する見込み。年6.5%という成長率は、IT業界全体の伸びと比べても堅調な水準だ。背景には、自治体・企業・住民の各層で防災デジタル投資が同時に拡大している構造がある。

防災ITシステムとデータ活用のイメージ

成長の3つのドライバー

1. 自治体の防災DX投資

政府が進める防災DXの本格推進に伴い、自治体側でも住民への避難情報配信、災害時の被害把握、避難所運営支援などのシステム投資が増加。日本経済新聞は、政府が2027年度から災害発生時にAIを活用して被災者や河川氾濫を探知する仕組みの運用を目指すと報じている。これに連動する形で、自治体向けセンサー設置・AI解析・データ統合の各領域に予算が回り始めている。

2. 企業のBCP実装ニーズ

事業継続力強化計画の認定企業の増加に伴い、BCP実装に必要なシステム(安否確認、リモート業務継続、データバックアップ、サプライチェーン可視化)の導入が進んでいる。中堅企業のBCP策定率57.6%という数字は、こうしたシステム投資の前提条件が整っている層が広がっていることを意味する。

3. 住民・個人向けサービスの拡大

スマートフォン経由の防災アプリ、家庭向け備蓄管理ツール、防災SNSなど、住民個人向けの防災ITサービスも増えている。富士経済の調査によれば、防災食品の国内市場も2017年度159.4億円から2026年度319.1億円規模まで拡大しており、防災関連消費の裾野は広がり続けている。

参入アングル — システム・SaaSベンダー向けの実践論

1. 自治体向け:防災庁関連調達の動向把握

2026年秋発足予定の防災庁は、各府省への勧告権を持つ司令塔として、自治体の防災DX調達の方向性に強い影響を及ぼす。発足前後の動きをウォッチし、初期段階で標準仕様に組み込まれるソリューションを準備した事業者が長期的なシェア確保に有利になる。

2. 企業向け:BCP実装パッケージ化

中堅企業のBCP策定率は57.6%と高いが、計画と実装の間にギャップがある。安否確認・データバックアップ・遠隔業務継続をパッケージ化したサービスは、計画策定済み企業の実装ニーズを取り込める。事業継続力強化計画に対応する税制優遇(特別償却16%)の対象設備に組み込めるよう、認定要件への対応を整えることが受注に直結する。

3. 個人向け:BtoBtoC モデルの設計

個人向け防災ITサービスは、直接BtoCで広告投下するよりも、自治体・企業・保険会社経由のBtoBtoCモデルが収益化しやすい。自治体の住民配信用アプリの裏側、企業の従業員向け防災サービスのエンジン、保険会社の付帯サービスとして提供する設計が現実的だ。

2030年市場規模予測 — 防災用品・設備の周辺領域

XenoBrainによる防災用品メーカー市場予測防災設備メーカー市場予測も、2030年に向けて中期成長が続く見通しを示している。情報システムだけでなく、ハード(防災設備、シェルター、備蓄品)とソフト(システム、コンサル、教育)の組合せ提案が市場拡大局面では効きやすい。

参入時の注意点

市場拡大が見込まれる一方、参入にあたっては次の点に注意が必要だ。

  • 調達サイクルの長さ:自治体案件は年度予算の制約があり、案件化から発注まで6〜12ヶ月かかるケースが多い。営業パイプライン設計を中長期で組み立てる必要がある
  • 業界標準への適応:防災情報の標準フォーマット(J-ALERT、L-アラート等)への対応が前提条件となる
  • 長期サポート体制:自治体・企業の防災システムは10年以上の運用が前提で、保守体制と料金設計を慎重に組む必要がある

まとめ

防災関連情報システム市場は2027年に1,533億円規模、年6.5%成長という安定基調にある。自治体DX投資・企業BCP実装・個人向けサービスの3つのドライバーが同時に動いており、向こう5年間は新規参入の絶好機といえる。一方、調達サイクル・業界標準・長期サポートという3つのハードルを乗り越える体制づくりが、本市場で勝つための前提条件となる。

WiZNAVI 編集部

国土強靱化・防災ビジネスに特化した専門メディア「WiZNAVI」の編集チーム。政策動向、市場分析、補助金情報、導入事例など、ビジネスパーソンの意思決定に役立つ情報を配信しています。