市場・トレンド

国産シェルター換気装置「ATバリア」が強靱化大賞受賞、CO除去の新型投入で見えた参入トレンド

結論を先に言う。札幌のプロテクトアーツ(ヤブシタグループ傘下)が開発したシェルター用換気システム「ATバリア」は、2026年5月に第12回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)2026で最優秀賞を受賞した。同社は

WiZNAVI 編集部市場・トレンド 担当
READ 5 min

結論を先に言う。札幌のプロテクトアーツ(ヤブシタグループ傘下)が開発したシェルター用換気システム「ATバリア」は、2026年5月に第12回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)2026で最優秀賞を受賞した。同社は同年9月、名古屋大学との共同研究で一酸化炭素(CO)除去機能を追加した新型「ATバリアEVO」を発表した。受賞と新製品投入という二つの実績を、わずか4か月の間に積んだことになる。地方発の中小メーカーが自社技術で存在感を増す動きは、シェルター・防災業界の参入トレンドを読む一つの材料になる。

強靱化大賞が評価した「ATバリア」の技術

週刊大阪日日新聞(2026年5月8日)によると、プロテクトアーツのATバリアは「有事や災害時の人命保護と安全な空間確保に向けた取り組み」が評価された(出典: https://weekly-osakanichi2.net/archives/50992 )。主催はレジリエンスジャパン推進協議会で、強靱化大賞は今回で12回目を数える。

ATバリアは密閉空間内の空気を浄化する装置だ。放射性物質や生物兵器による汚染の浄化に加え、粉じん・PM2.5・花粉・臭気・ガス状物質を段階的に除去する機能を持つ。想定用途は機種によって分かれる。主力機種は本格的な防護仕様で、より小型の機種は日常的な建物向けに位置づけられている。用途規模で機能に差を持たせる考え方は、防護性能と導入コストのバランスを取るための工夫と言える。詳しい機種別の対象先は後段の比較表にまとめた。

[画像1: ATバリアの設置イメージ — シェルター内部の換気装置]

4か月後に投入された「世界初」を掲げる新型

プロテクトアーツは2026年9月1日、新製品「ATバリアEVO」を発表した(出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000148115.html )。目玉は名古屋大学との共同研究で開発した新しい複合触媒技術だ。この技術によって一酸化炭素(CO)を処理する。特許は出願中とされている。

同社は2026年8月時点の自社調査に基づき、独自の位置づけを掲げている。「CBRN(化学・生物・放射性物質・核)対応かつCO除去機能を搭載するシェルター用換気装置として世界初」という主張だ。この主張はあくまで自社調べであり、第三者機関による検証は現時点で公表されていない。ただし発表内容自体は、プレスリリースという一次情報として実在する。

性能を示す具体的な除去率などの数値は、プレスリリースでは開示されていない。木材の不完全燃焼試験で機能を確認したという記述があるのみだ。定量データは非公開のまま、新製品として市場に投入された形になる。

なぜCO除去が論点になるのか

シェルターの主な脅威想定は爆発や有毒ガスだ。だが地震後の延焼火災も、もう一つの現実的なリスクになる。地下シェルターは外気取入口や換気経路を通じて、煙や一酸化炭素を室内に取り込みかねない。避難した先のシェルターで新たな中毒リスクが生じる。この「避難後の二次災害」という論点は、従来のCBRN対応だけでは塞ぎきれない穴だった。ATバリアEVOは、この穴を埋める狙いで開発されている。

避難者の安全確保という観点では、二つの備えが問われる。一つは爆発物や生物兵器といった非日常の脅威対応だ。もう一つは、地震という日常的に想定される災害への対応力になる。CO除去機能の追加は、シェルターという防護空間の設計思想が変わってきていることを示す一例と言える。「非常時の極限想定」から「実際に起きやすい複合災害」への広がりだ。

強靱化大賞という賞の位置づけ

強靱化大賞は、レジリエンスジャパン推進協議会が主催する表彰制度だ。有事や災害への備えに関する製品・取り組みを対象にしている点が特徴になる。政府が主導する防災施策そのものではなく、民間の技術・取り組みを業界横断で評価する枠組みという位置づけだ。

シェルターという言葉からは、建物本体の強度や気密性が連想されやすい。しかし実際の防護空間は、換気・空気浄化・電源といった周辺システムが揃って初めて機能する。ATバリアの受賞は、本体のシェルターほど注目されにくいこうした周辺機器の分野にも、独自技術を持つ企業がいることを可視化した。業界の厚みは、目立つ本体メーカーだけでなく、こうした部材・システムメーカーの集積によって決まる部分が大きい。

機種別の想定用途(比較)

3機種の位置づけを整理すると、対象範囲がグラデーションになっていることが分かる。防災拠点向けの重厚な装備から、家庭でも使える小型機まで、幅を持たせている点が特徴だ。

機種想定導入先特徴
ATバリア150自治体・公共施設・防災シェルター・企業BCP拠点主力機種。汚染浄化と段階除去の機能をフル装備する
ATバリアLite公共施設・オフィス・住宅小型機。停電時は手回し運転に切り替えられる
ATバリアEVO上記用途に加え地下シェルター一般新複合触媒によるCO除去機能を追加(特許出願中)

国産・地方発メーカーが示す業界の厚み

シェルター関連の話題では、輸入品や大手メーカーの動きが目立ちやすい。しかし今回の事例は違う角度を示している。地方発の中小メーカーが、業界の賞という外部評価と、独自技術を積んだ新製品という二つの成果を、短い期間で重ねて見せた。この事実は、国内サプライヤーの技術的な裾野が広がっていることを示す。輸入依存でない国産の部材メーカーが育つかどうかは、業界全体の供給網の安定性にも関わる論点だ。

業界構造とプレイヤーの多様化という観点では、部材メーカーの技術動向も業界全体像の一部として見る必要がある。全体像は防災・防災業界の構造とプレイヤー地図で整理した。市場規模の観点は日本のシェルター市場の規模と将来性で扱っている。あわせて読むと、個別の技術動向と業界全体の構造がつながって見えてくる。

なお、二点は留意しておきたい。一つは性能数値が非開示である点だ。もう一つは「世界初」の主張が自社調べに基づく点である。いずれも今後の検証や第三者評価の余地として残る。読者としては、受賞や新製品発表というニュース性の高さと、性能の実証度合いを分けて見る姿勢が欠かせない。業界の技術動向を追う上では、この二軸を混同しないことが読み解きの精度を左右する。

--- 公開日: 2026-09-23/SUP+30編集部(初稿)

WiZNAVI 編集部
市場・トレンド 担当

国土強靭化に関わる政策・制度・予算を、建設/不動産/施設運営の経営判断に使える形で読み解く編集チーム。

強靭化・防災の動きを、見逃さない。

政策・補助金・市場・防災実務を、経営判断に使える形で。ご相談・取材のご依頼、最新記事はこちらから。