政策・制度

自治体BCP、重要6要素の策定は市町村57.3%どまり — 都道府県100%との差が意味すること

SUP+30編集部 / 公開日:2026-08-19 総務省消防庁・内閣府が2026年3月19日に公表した最新調査によると、都道府県は47団体すべてが業務継続計画の重要6要素を策定済みで、達成率は100%だった。一方の市

WiZNAVI 編集部政策・制度 担当
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SUP+30編集部 / 公開日:2026-08-19

総務省消防庁・内閣府が2026年3月19日に公表した最新調査によると、都道府県は47団体すべてが業務継続計画の重要6要素を策定済みで、達成率は100%だった。一方の市町村は1,741団体中997団体にとどまり、達成率は57.3%である。前回調査からの増加は31団体で、行政自身の事業継続体制にはなお大きな地域差が残る。

調査の概要 — 何を、いつ、どの範囲で調べたか

この数値は、消防庁と内閣府政策統括官(防災担当)が公表した「地方公共団体における業務継続計画・受援計画策定状況の調査結果」に基づく。調査基準日は令和7年4月1日で、対象は都道府県47団体・市町村1,741団体のすべてである。業務継続計画とは、大規模災害などで行政機能が一時的に低下した場合でも、優先度の高い業務を継続するための計画を指す。同計画には特に欠かせない要素が6つあり、これを「重要6要素」と呼ぶ。今回の調査は、この重要6要素それぞれの策定状況を、都道府県・市町村別に集計したものである。出典: https://www.soumu.go.jp/main_content/001061265.pdf

都道府県100%、市町村57.3%の6要素別内訳

重要6要素とは、首長不在時の代行順位・職員参集体制、代替庁舎の特定、電気・水・食料等の確保、多様な通信手段の確保、重要な行政データのバックアップ、非常時優先業務の整理の6つを指す。都道府県はこの6要素すべてで、47団体全部が策定済みである。前回調査(令和6年4月1日時点)と比べても、代替庁舎の特定が1団体増えた以外は変化がなく、都道府県レベルではすでに天井に達している。

市町村側は要素ごとにばらつきが大きい。最も進んでいるのは「首長不在時の代行順位・参集体制」で1,726団体、最も遅れているのは「電気・水・食料等の確保」で1,091団体である。両者の差は635団体にのぼる。以下は要素別の策定団体数と前回調査からの増減をまとめた表である。

重要6要素都道府県(前回比)市町村(前回比)
首長不在時の代行順位・参集体制47(±0)1,726(±0)
代替庁舎の特定47(+1)1,634(+7)
電気・水・食料等の確保47(±0)1,091(+23)
多様な通信手段の確保47(±0)1,559(+21)
重要行政データのバックアップ47(±0)1,535(+27)
非常時優先業務の整理47(±0)1,652(+14)

6要素すべてを揃えた市町村の合計は997団体、割合では57.3%にあたる。前回調査からの増加幅は31団体で、伸び自体は続いているが、歩みは緩やかである。都道府県が全団体で天井に達しているのに対し、市町村側はなお改善の余地が大きいことが、この数字からも読み取れる。出典: https://www.soumu.go.jp/main_content/001061265.pdf

なぜ「電気・水・食料」が最も遅れるのか

6要素のなかで最も策定率が低いのは、庁舎機能を物理的に維持するための備え、すなわち電気・水・食料等の確保である。この要素は非常用発電機の燃料や、職員向けの水・食料の備蓄量まで具体的に定める必要がある。単に方針を文書化するだけでなく、実際の設備投資や備蓄スペースの確保を伴う点が特徴だ。首長の代行順位や参集体制のように規程の整備で対応できる要素と比べると、予算と物理的なリソースを要する分だけハードルが高いと考えられる。今回の調査結果自体は策定できない理由までは分析していないが、要素間の達成率の差は、計画づくりの負荷が「文書の整備」と「物理的な備えの確保」で異なることを示すデータとして読める。

受援計画も同時進行、都道府県全団体・市町村1,433団体

調査は業務継続計画とあわせて、他の自治体や国からの応援職員を受け入れる「受援計画」の策定状況もあわせて公表した。都道府県は全47団体が受援計画を策定済みである。市町村は1,433団体が策定済みで、前回調査から66団体増加した。

業務継続計画本体を6要素すべて揃えた市町村は997団体・57.3%だった。これに対し受援計画は1,433団体・約82.3%と、策定率がより高い。単独の自治体だけで大規模災害に対応しきるのは難しいという前提のもと、外部からの応援を受け入れる体制づくりを先に進める自治体が一定数あることを示唆する結果といえる。詳細は同じ調査結果(https://www.soumu.go.jp/main_content/001061265.pdf)にまとまっている

消防庁・内閣府が示した3つの取組方針

今回の調査結果の公表にあわせて、消防庁・内閣府政策統括官(防災担当)は地方公共団体に対して通知を発出した。内容は大きく3点である。第一に、重要6要素のうち定めていない項目がある団体は、その整備を進めること。第二に、地域防災計画や業務継続計画に受援計画を追加するなど、災害時の受援体制を整えること。第三に、職員向けの研修・訓練を通じて業務継続計画の実効性を確認し、必要な見直しを継続的に行うことである。

この3点は、単に「計画を作って終わり」ではなく、実効性の検証まで含めて求めている点が特徴だ。策定率という数字だけでなく、訓練を通じて実際に機能するかどうかを継続的に確認する運用フェーズへ、国の関心が移りつつあることがうかがえる。出典: https://www.soumu.go.jp/main_content/001061265.pdf

業界にとっての意味 — 官民連携の受け皿としての自治体BCP

自治体自身の事業継続体制は、シェルター市場規模を含む防災・レジリエンス業界にとって、単なる行政の内部事情では終わらない。市町村の6要素策定が57.3%にとどまるという事実は、災害時に自治体が自らの機能を維持しながら、住民支援や広域からの応援を受け入れる体制が、なお発展途上であることを意味する。

政府が2026年3月に閣議決定したシェルター確保基本方針は、2030年までに市区町村単位で住民を収容できる避難施設を確保するという目標を掲げている。この目標も、受け皿となる自治体側の業務継続体制が整っていて初めて実効性を持つ。電気・水・食料の確保や通信手段の確保といった重要6要素は、避難施設そのものの運用を下支えする基盤でもある。

業界が自治体向けに提供しうる設備やシステムの意味は、避難施設の整備単体だけでなく、自治体の業務継続基盤全体をどう底上げするかという観点からも読み解く価値がある。庁舎の代替機能や通信手段の多重化、電源・備蓄の確保といった要素は、いずれも防災・レジリエンス業界が扱ってきた技術領域と重なりが大きい。57.3%という数字は、業界にとってまだ半分近くが手つかずの領域が残っているという読み方もできる。

消防庁・内閣府が通知で示した「訓練を通じた実効性の確認」という方針も見逃せない。計画を文書として整えるだけでなく、実際に機能するかを確認する運用段階に入ったことがうかがえる。この変化は、防災訓練や図上演習、業務継続計画の実効性を可視化するデジタルツールといった領域に、自治体からの新たな需要が生まれる余地を示している。57.3%という達成率の数字それ自体よりも、その先にある「策定から運用へ」という重心の移り方を継続的に追っていく価値があるテーマだ。

更新ログ: 2026-08-19 初稿公開(総務省消防庁・内閣府調査結果に基づく)。

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