事業継続力強化計画で防災投資を「前向きな投資」に変える 税制・補助金・融資の使い方
防災やBCPへの備えは、つい「コスト」と見て先送りになりやすい。けれど中小企業には、その備えを後押しする公的なしくみがそろっている。この記事は経営者とBCP担当の方に向けて、国の認定をきっかけに、税と補助金と融資をどう重ねていくかを順に見ていく。読み終えるころには、備えを守りの支出から前向きな投資へ捉え直す道すじが見えてくるはずだ。SUP+30 編集部は、もう先送りに経済的な理由はない、と考えている。
防災投資が止まる理由と、入口になる認定制度
備えの話は、いつも費用の話で止まる。地震や停電にそなえる設備は、すぐに売上を生まない支出に見えるからだ。だから「うちはまだいい」と後回しになりやすい。
そこで知っておきたいのが、事業継続力強化計画という認定のしくみだ。中小企業等経営強化法にもとづく制度で、自社の防災・減災の取り組みを計画にまとめ、国の認定を受ける。認定を取ると、税の優遇、金融の支援、補助金の加点、そして認定ロゴによる信頼性の向上という、4つの後押しが使えるようになる。
計画は1社で作る単独型と、取引先などと作る連携型がある。じつは作る過程そのものに価値がある。どこが止まると事業が回らなくなるか、最初の動きはどうするか。そうした弱点と初動を、自分の言葉で棚おろしできるからだ。費用をどう出すかの前に、まずこの入口を通すと、あとの支援が一本につながっていく。
税制で投資の回収を早める(特別償却)
認定を取ると、税の面で投資の回収を早めやすくなる。中小企業防災・減災投資促進税制が使えるからだ。
この税制では、認定から1年以内に取った特定の設備に、特別償却を上のせできる。特別償却とは、設備の費用を早めに経費へ計上できるしくみだ。その年の利益を圧縮できるので、納める税のタイミングが後ろにずれ、手元のお金が残りやすくなる。対象になるのは、自家発電の設備、浄水の装置、揚水や排水のポンプ、耐震・制震・免震の装置などだ。償却の割合は、令和7年4月1日より後に取った設備で16%になる。これは従来の18%から見直された数字で、適用の期限は2027年3月31日まで、計画の認定そのものの期限は令和9年3月31日までと決まっている。
ひとつ気をつけたい点がある。対象になる設備は区分で細かく定められている。シェルターのような物理防護の設備がこの区分に当てはまるかは、個別の確認がいる。ここは言い切らず、税理士や所管の窓口でたしかめてほしい。要確認のまま慎重に進めるほうが安全だ。
補助金の加点と低利の融資で初期費用を軽くする
税制が回収を早めるしくみなら、補助金と融資は、初期の費用そのものを軽くするしくみだ。
事業継続力強化計画の認定は、いくつかの補助金で審査の加点になる。たとえば、ものづくり補助金、中小企業省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金などだ。これらは設備投資や販路開拓を支える定番の補助金で、採否は点数で決まる。同じ申請でも、認定があると一歩前に出やすい。
さらに、認定を受けた企業は、政策金融による低利の融資の対象にもなる。補助金で初期の費用を下げ、融資で資金ぐりをならす。この2つを組み合わせると、手元の現金を大きく削らずに備えを進められる。費用の壁は、ひとつの制度ではなく、合わせ技で越えていくものだ。
使える支援を一覧で見くらべる
どの支援も、入口は認定制度に集まっている。全体像を一覧でおさえておくと、自社に合う組み合わせを選びやすい。
| 支援 | 主な内容 | 得られるもの |
|---|---|---|
| 認定制度 | 防災の取り組みを計画にし国が認定 | ほかの支援の入口・信頼性 |
| 税制 | 特定の設備に特別償却を上のせ | 投資の回収を早める |
| 補助金 | 各種の補助金で審査を加点 | 初期の費用を下げる |
| 融資 | 政策金融による低利の融資 | 資金ぐりをならす |
表のとおり、土台は認定制度だ。まず認定を取り、その上に税・補助金・融資を重ねていく。この順番を意識すると、使える支援を取りこぼさずにすむ。逆に、設備だけ先に買ってしまうと、認定が後追いになり、税制の「認定から1年以内」という条件に間に合わないこともある。順番が、そのまま得になる。
申請から設備の取得まで、順番をまちがえない
実際に動くときは、流れを先に決めておくと迷わない。おおまかには、次のように進む。
まず、自社のリスクと初動を棚おろしし、計画の形にまとめる。次に、その計画を所管の窓口へ出して認定を受ける。設備をそろえるのは、原則としてこの認定のあとだ。税制の特別償却は「認定から1年以内に取った設備」が条件なので、買う時期が早すぎても遅すぎても外れてしまう。だから、計画と認定を先にすませてから、必要な設備の取得へ進む。
補助金は公募の時期が決まっている。低利の融資も、申し込みから実行まで時間がかかる。つまり、設備の取得だけを単独で急ぐより、認定・補助金の公募・融資の実行をひとつの年度の中でそろえると、効果が重なりやすい。取引先と一緒に備えるなら、連携型の計画にして、サプライチェーン全体で止まらない形をつくる手もある。
まとめ:守りの支出から、攻めの投資へ
防災・BCPの備えは、もう「守りの固定費」だけではない。認定という入口を通せば、税で回収を早め、補助金で初期の費用を下げ、融資で資金ぐりをならせる。後押しを上手に使えば、備えは前向きな投資に変わっていく。
先送りの理由が「お金」なら、そのお金は制度で軽くできる。あとに残るのは、いつ動くかという判断だけだ。同じ設備でも、認定を取ってから動けば、税と補助金と融資のぶんだけ実質の負担は下がる。何もしなければ、その差はまるごと取りこぼしになる。備えの巧拙は、設備の良し悪しよりも、制度を先に押さえたかどうかで分かれていく。
策定率の格差や取引先からの要求といった「なぜ今なのか」は、別の記事でくわしく扱う。あわせて読むと、投資の判断につかえる材料がそろうはずだ。まずは自社のリスクを一枚の計画にまとめるところから、始めてみてほしい。
出典
- 中小企業庁「事業継続力強化計画」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.html
- 中小企業庁「中小企業防災・減災投資促進税制の概要」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/download/keizokuryoku/bousaizeisei_gaiyo.pdf
- 中小企業基盤整備機構「事業継続力強化計画 税制・支援」 https://kyoujinnka.smrj.go.jp/guidance/tax_system.html
国土強靭化に関わる政策・制度・予算を、建設/不動産/施設運営の経営判断に使える形で読み解く編集チーム。
