防災・BCP(事業継続計画)の補助金は「制度があるか」より「いつ締切が来るか」で勝負が決まる。2026年の初夏は、デジタル化・AI導入補助金の次回締切(6月15日)、東京都のBCP実践促進助成金の第2回受付(9月)など、防災・事業継続に直結する公募回が立て続けにやって来る局面だ。本記事では、2026年6〜9月に申請のチャンスがある具体的な公募回を、官庁・自治体の一次情報で締切と金額まで確定させたうえでカレンダー形式に整理する。「気づいたら締切が過ぎていた」を防ぐための実務メモとして使ってほしい。
1|2026年夏の公募カレンダー全体像
まずは全体像から。2026年6〜9月に「防災・BCP・事業継続」に活用できる主要制度の公募回を、締切と上限額で一覧にした。それぞれの根拠は後段の各章で官庁・自治体の一次情報にあたって確認していく。
| 制度 | 直近の締切・受付 | 補助・助成の上限 | 実施主体 |
|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠) | 2次締切 2026年6月15日 | 450万円 | 中小企業庁/中小機構 |
| BCP実践促進助成金(令和8年度) | 第2回 2026年9月9日〜15日 | 単独500万円/連携1,000万円 | 東京都中小企業振興公社 |
| 中小企業防災・減災投資促進税制 | 令和9年(2027年)3月31日までに計画認定 | 特別償却16% | 中小企業庁(税制措置) |
| 事業継続力強化計画(認定制度) | 通年(上記2制度の前提) | 金融・税・補助金加点 | 経済産業大臣認定 |
※出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」リンク/東京都中小企業振興公社「BCP実践促進助成金」リンク/中小企業庁「事業継続力強化計画」リンク
1-1 なぜ「夏」がポイントなのか
補助金は予算年度に沿って公募されるため、年度初め(4〜6月)に各制度の今年度ルールが出そろい、夏に向けて最初の締切群が動き出す。2026年も、3月末に公募要領が公開されたデジタル化・AI導入補助金が6月に締切を迎え、東京都のBCP助成金は5月の第1回に続いて9月に第2回が控える。この時期に準備を始めれば、年内の交付決定・設備導入に間に合うスケジュールが組める。
1-2 まず「事業継続力強化計画」を押さえる理由
後述する税制と金融支援の入り口になるのが、経済産業大臣が認定する「事業継続力強化計画」だ。認定件数は令和7年12月末時点で累計92,523件(うち連携型1,742件)に達しており、防災投資の前提インフラとして定着している。補助金審査の加点にもなるため、夏の公募に向けてまず取得しておくと効果が広がる。
※出典:中小企業庁「事業継続力強化計画 認定制度の概要(令和8年3月17日版)」リンク
2|【6月15日締切】デジタル化・AI導入補助金2026 — BCPのIT化に使う
旧「IT導入補助金」が、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金2026」に名称を変えてスタートした。公募開始は2026年3月30日。通常枠の次回締切は2026年6月15日(月)17時で、防災・BCPの観点では「事業継続に必要なIT基盤」をそろえる用途に直結する。
※出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」リンク
2-1 補助率と上限 — プロセス数で変わる
通常枠の補助率は1/2以内(従業員に占める低賃金労働者の割合が30%以上の事業者などは2/3以内)。補助額は導入する業務プロセス数で段階が変わり、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下となる。対象経費はソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)が必須で、導入設定・保守サポートなどはオプションだ。
※出典:中小機構「通常枠|デジタル化・AI導入補助金2026」リンク
2-2 防災・BCPの文脈での使いどころ
このカテゴリーは「防災専用」ではないが、安否確認システム、クラウド型の受発注・在庫管理、データのクラウドバックアップなど「災害で事業所が使えなくなっても業務を止めない」IT投資に充てられる。クラウド利用料が最大2年分まで対象になる点は、サーバを持たずに事業継続性を高めたい中小企業と相性がよい。
2次締切の交付決定は2026年7月23日(木)予定、事業実施期間の終了は2027年1月29日(金)17時予定とされている。締切から逆算して、ITツールの選定と申請準備は5月中に着手しておきたい。
※出典:中小機構「通常枠|デジタル化・AI導入補助金2026」リンク
3|【9月受付】東京都・BCP実践促進助成金(令和8年度)
東京都内の中小企業にとって、防災・BCPの設備投資にもっとも使いやすいのが東京都中小企業振興公社の「BCP実践促進助成金」だ。令和8年度は受付を年3回に分けて実施しており、第1回は2026年5月13日〜19日で終了済み。次のチャンスは第2回の2026年9月9日(水)〜9月15日(火)、その後第3回が2027年1月8日〜15日に予定されている。
※出典:東京都中小企業振興公社「BCP実践促進助成金」リンク
3-1 助成額と助成率 — 単独型・連携型
助成限度額は単独型500万円、複数社で取り組む連携型は1,000万円。助成率は中小企業者が1/2(連携型は1/2以内)、小規模企業者は2/3以内とされ、クラウド化に充てられる助成上限は単独型150万円・連携型300万円が設定されている。対象は、公社のBCP策定講座の受講などにより策定したBCPを実践するために必要な物品・設備等の導入だ。
※出典:東京都中小企業振興公社「BCP実践促進助成金」リンク
3-2 申請はJグランツ — GビズIDの準備を先に
申請は国の電子申請システム「Jグランツ」で行い、GビズIDプライムアカウントが必須となる。アカウント発行には日数がかかるため、9月の第2回を狙うなら夏前にGビズIDの取得を済ませておくのが安全だ。受付期間が1週間と短いのも、この助成金の注意点である。
※出典:東京都中小企業振興公社「BCP実践促進助成金」リンク/都庁総合ホームページ「BCP実践促進助成金 募集」リンク
4|【通年・全国】中小企業防災・減災投資促進税制という選択肢
補助金が「もらう」支援なら、税制は「払う税を減らす」支援だ。地域や予算枠に縛られず全国の中小企業が使えるのが「中小企業防災・減災投資促進税制」で、自家発電設備や排水ポンプ、耐震・制震・免震装置といった防災設備への投資を後押しする。
4-1 特別償却16% — 数字と適用期限
この税制は、令和元年7月16日〜令和9年(2027年)3月31日までの間に事業継続力強化計画(または連携事業継続力強化計画)の認定を受けた事業者が、認定日から1年以内に計画記載の対象設備を取得し事業に使った場合、特別償却16%の措置を受けられる仕組みだ。令和7年度税制改正で適用期限が2027年3月31日まで延長される一方、令和7年4月1日以後に取得する設備の特別償却率は従来の18%から16%に見直された。
※出典:中小企業庁「中小企業防災・減災投資促進税制(制度概要)」リンク
4-2 対象設備 — 自家発電・浄水・耐震など
対象は計画に記載された「事業継続力の強化に特に資する設備」で、機械及び装置(取得価額100万円以上)として自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置などが含まれる。停電・断水・揺れという災害の典型シナリオに対する備えが、そのまま節税対象になる構図だ。
※出典:中小企業庁「中小企業防災・減災投資促進税制(制度概要)」リンク
4-3 「計画認定が先、投資はあと」の順序に注意
この税制で最も間違えやすいのが順序だ。特別償却は「認定を受けた日から1年以内に取得した設備」が対象であり、設備を買ってから計画を出しても遡れない。夏に防災設備の投資を予定しているなら、まず事業継続力強化計画の認定を済ませ、そのうえで設備を取得するという順番を守る必要がある。
事業継続力強化計画の認定は、税制だけでなく日本政策金融公庫による低利融資(設備資金で基準利率から一定の引下げ)や、各種補助金審査での加点にもつながる。夏の防災投資を考えるなら、計画認定を起点に税制・融資・補助金を組み合わせる発想が効率的だ。
※出典:中小企業庁「事業継続力強化計画」リンク
5|逆算スケジュールの組み方
制度を並べただけでは動けない。最後に、2026年夏の締切群から逆算した準備手順を整理しておく。
5-1 6月締切を狙う場合(デジタル化・AI導入補助金)
- GビズIDプライムを取得済みか確認(未取得なら最優先で発行申請)。
- 導入するITツールと業務プロセス数を確定し、補助額の段階を見極める。
- 6月15日17時の締切から逆算し、申請書類を6月上旬までに整える。
5-2 9月受付を狙う場合(東京都BCP実践促進助成金)
- 夏前に公社のBCP策定講座の受講・BCP策定を進める。
- 導入する防災設備(クラウド化を含む)を選定し、見積もりをそろえる。
- 9月9〜15日の1週間に確実に申請できるよう、書類を8月中に完成させる。
5-3 設備投資+節税を狙う場合(防災・減災投資促進税制)
- 事業継続力強化計画を作成し、経済産業大臣の認定を取得する。
- 認定日から1年以内に、計画記載の対象設備(取得価額100万円以上)を取得・稼働させる。
- 確定申告で特別償却16%を適用する。投資はあくまで認定のあとに行う。
6|まとめ
この記事のポイント
- デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)は、次回締切が2026年6月15日。補助率1/2以内、上限450万円で、安否確認やクラウドバックアップなど「事業を止めないIT」に使える。
- 東京都のBCP実践促進助成金(令和8年度)は第2回が2026年9月9〜15日。助成上限は単独型500万円・連携型1,000万円、申請はJグランツでGビズIDが必須。
- 中小企業防災・減災投資促進税制は、事業継続力強化計画の認定を前提に特別償却16%(令和7年4月以後取得分)。適用期限は2027年3月31日までで全国の中小企業が対象。
- 事業継続力強化計画(累計92,523件認定)は、税制・低利融資・補助金加点の共通の入り口。夏の投資はまず計画認定から始める。
- BCP税制は「計画認定が先、設備取得はあと」が鉄則。順序を間違えると特別償却を取り損ねる。
WiZNAVIでは、国土強靱化・防災・BCP・補助金の最新公募情報を、建設業者・中小企業経営者・自治体担当者の実務目線で継続的に解説していきます。補助金は「制度を知っている」だけでは1円にもならず、締切から逆算して動いた事業者だけが受け取れます。2026年夏の公募群は、防災投資を一段進める好機です。自社に合う制度を早めに見極め、計画認定とアカウント準備という地味な前作業から着手していきましょう。
WiZNAVI 編集部
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