都市の地下空間と防災インフラをイメージした写真
シェルター

東京都が麻布十番駅の地下にシェルター整備へ — 自治体の先行事例と今後の展開

2026年4月8日6分で読了強靭化Bizナビ編集部

東京都が都営地下鉄大江戸線・麻布十番駅の地下にシェルターを整備する計画が本格始動した。弾道ミサイル攻撃を想定したモデル事業であり、全国の自治体や建設業者にとっても重要な先行事例となる。本記事では、計画の具体的な内容と全国の緊急一時避難施設の現状、今後の展開について解説する。

麻布十番駅シェルター計画の概要

東京新聞の報道によると、東京都は大江戸線麻布十番駅に併設する広さ約1,400平方メートルの防災備蓄倉庫を改修し、弾道ミサイル攻撃時の避難施設(シェルター)として整備する。地下約16メートルに位置するこの倉庫は、地下4階から6階に相当する深さにある。

整備スケジュールと予算

  • 2024年度:調査費として5,000万円を計上
  • 2025年度:設計費として1億7,000万円を計上
  • 2026〜2027年度:本体改修工事を実施予定

改修工事では、換気設備や非常用発電機などを設置し、避難者が一定時間滞在できる環境を整備する。ミサイルからの避難場所として扉や壁の強度をどの程度とするかなど、詳細は引き続き検討中とされている。

なぜ麻布十番駅なのか

Smart FLASHの報道によれば、大江戸線は全線が地下区間であり災害の影響を受けにくい路線だ。麻布十番駅と清澄白河駅の2駅には、もともと防災備蓄倉庫が設けられており、物資搬送用のベルトコンベアーで地上と接続されている。既存の防災インフラを転用できる点が選定の理由と見られる。

地下施設と防災インフラのイメージ

全国の緊急一時避難施設の現状

内閣官房の国民保護ポータルサイトによると、令和6年(2024年)4月1日時点の全国の緊急一時避難施設の指定状況は以下の通りだ。

  • 緊急一時避難施設:58,589カ所(前年度比2,416カ所増)
  • うち地下施設:3,926カ所(前年度比590カ所増)
  • 人口カバー率(全体):139.7%
  • 人口カバー率(地下施設のみ):4.7%

全体の人口カバー率は139.7%と一見十分に見えるが、コンクリート建築物が中心であり、爆風からの防護力が高い地下施設はわずか4.7%に留まる。これが「地下シェルターの不足」として問題視されている背景だ。

東京メトロの全駅指定完了

東京メトロは2025年3月28日、75施設の地下駅舎が緊急一時避難施設として追加指定されたと発表した。これまでの85施設と合わせ、対象となる全160施設の地下駅舎が指定を完了した。弾道ミサイル攻撃等による爆風から身を守るための一時的な避難先として、地下鉄駅の活用が全国的に加速している。

他の自治体・国の動き

政府の方針:2024年度「骨太の方針」

政府は「経済財政運営と改革の基本方針2024」において、「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)について、地下施設の一層の確保を始め、取組を推進する」と明記した。全国の地下施設の実態調査にも着手しており、麻布十番駅の整備はこの方針を具体化するモデル事業と位置づけられる。

KDDIスマートドローン:ドローンポート1,000カ所構想

KDDIグループは全国1,000カ所へのドローンポート設置を目指し、南海トラフ地震のリスクを見据えた徳島県や滋賀県との包括連携協定を締結している。地下シェルターとドローンポートという「地下と空」の両面で、自治体の防災インフラ整備が加速している状況だ。

建設業者にとっての意味

麻布十番駅のシェルター整備は、建設業界にとって以下の点で注目に値する。

  1. 地下施設改修の需要拡大:政府方針により、全国の地下施設をシェルターとして整備する動きが広がる可能性がある。換気設備、非常用電源、耐爆構造の設計・施工に関する技術力が求められる。
  2. 公共工事としての規模感:麻布十番駅だけで調査・設計段階で約2.2億円が投じられている。本体工事を含めれば、1カ所あたり数十億円規模の事業となる可能性がある。
  3. 民間施設への波及NPO法人日本核シェルター協会は、公共シェルターの整備が進むことで民間の地下シェルター需要も喚起されると指摘している。マンションや商業施設の地下階をシェルター仕様にするリフォーム需要も見込まれる。
都市の地下空間のイメージ

まとめ — 「地下を守る」時代の始まり

麻布十番駅のシェルター整備は、日本の防災インフラが「自然災害への備え」から「武力攻撃を含む複合的脅威への備え」へと拡張していることを象徴する事業だ。全国の地下施設の人口カバー率がわずか4.7%という現状を踏まえれば、同様の整備事業が他の自治体にも広がることは確実と見られる。

建設業者にとっては、地下施設改修という新たな市場が生まれつつある。耐爆構造、換気設備、非常用電源といった専門技術の蓄積が、今後の受注競争で差別化要因となるだろう。

強靭化Bizナビ編集部

国土強靱化・防災ビジネスに特化した専門メディア「強靭化Bizナビ」の編集チーム。政策動向、市場分析、補助金情報、導入事例など、ビジネスパーソンの意思決定に役立つ情報を配信しています。