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防災・レジリエンス市場はどこへ向かうか — 規模でなく「局面」で読む2026年

日本の防災・レジリエンス市場は、「規模」より「局面」で読むべき段階に入った。国内市場そのものは数千億円規模にとどまる。だが、5年で20兆円強の国土強靱化予算、シェルター確保の基本方針の閣議決定、そして築30〜40年住宅の

管理者市場・トレンド 担当
2026.01.12READ 5 min
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日本の防災・レジリエンス市場は、「規模」より「局面」で読むべき段階に入った。国内市場そのものは数千億円規模にとどまる。だが、5年で20兆円強の国土強靱化予算、シェルター確保の基本方針の閣議決定、そして築30〜40年住宅のストック需要が重なりはじめた。市場は「認知の形成期」から「刈り取り期」へと局面を移しつつある。この記事は、その転換を公的データで読み解く。

国内は数千億円、世界は数兆円——数字の出所を分ける

「防災市場5兆円」といった数字が独り歩きしている。だが国内と世界を混同してはいけない。国内の防災情報システム・サービス市場は、2024年度で約2,150億円、2025年度で約2,416億円と推計される(出典: 富士キメラ総研調査 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000109717.html )。国内はまだ数千億円の規模である。

一方、兆円単位の予測は世界市場の話だ。世界の災害対策システム市場は、2024年に約1,866億ドルとされる。2030年には約3,004億ドルへ拡大する見通しで、年平均の成長率は8%台だ(出典: GII 災害対策システム市場レポート https://www.gii.co.jp/report/ires1715810-disaster-preparedness-systems-market-by-type.html )。資料で見かける「兆円」の多くは、この世界規模の数字だ。国内の数千億円とは分けて読む必要がある。

局面を動かす3つの公的事実

規模の絶対値より、市場の局面を動かしているのは次の3つの制度・構造の要因である。

要因事実市場への含意
国土強靱化予算第1次実施中期計画で5年20兆円強(現行の約15兆円から増額)官需の裾野が広がり、関連投資の呼び水になる
シェルター基本方針2026年3月31日に確保の基本方針を閣議決定。2030年まで市区町村単位で全住民の収容分を目標需要の「上限」が政策目標として明示された
住宅ストックの世代交代2025年の新設着工は740,667戸で3年連続の減。新築とリフォーム合算で約100万戸規模需要はフロー(新築)よりストック(後付け)へ移る

国土強靱化の中期計画は2025年6月に閣議決定された。2026年度の概算要求は前年比で大きく積み増され、政府はシェルター確保の関係府省連絡会議を重ねている(出典: 内閣官房 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shelter/index.html )。住宅着工の減少は、一見ネガティブに見える。だが防災市場にとってはむしろ、ストックが主戦場になる構造を示す。2025年の着工は総計740,667戸で、2年連続で80万戸を下回った。これは過去20年で初めてだ(出典: 国土交通省 住宅着工統計 https://www.mlit.go.jp/ )。新築の件数と、命を守るインフラの需要は連動しない。

予算は増え、政策の担い手も定まりつつある

局面を後押ししているのは予算の規模だけではない。国土強靱化の中期計画は、現行の約15兆円から5兆円ほど積み増され、5年で20兆円強となった。2026年度の概算要求の段階でも、防災・強靱化まわりの要求は前年比でおよそ2割を超えて増え、6兆円台半ばに達した(出典: 内閣官房 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shelter/index.html )。予算という「呼び水」が太くなれば、周辺の民間投資も動きやすくなる。単年で見ても増額の勢いははっきりしており、これは市場の期待を先に温める材料になる。

同時に、政策を動かす担い手の配置も進んだ。政府はシェルター確保に向けた関係府省の連絡会議を重ね、2026年3月末には確保の基本方針を閣議決定するに至った。ここで押さえておきたいのは、現時点はあくまで「行政の方針・基本方針の段階」であり、法案の提出はまだという点だ。過去の耐震や省エネの普及がそうだったように、法整備は市場が動いた後に後追いで進む公算が大きい。

需要のボリュームゾーンは「築30〜40年」

市場を読むうえで見落とされがちなのが、需要層の構造だ。最大のボリュームゾーンは築30〜40年、すなわち2000年の建築基準法改正より前に建てられた住宅群である。この改正では、地盤調査の義務化と構造規定の強化が入った。その前の世代の住宅は、いま大規模な修繕か建て替えかの判断時期にある。現行の防災基準に不安を持つオーナーも多い。市場の需要は「新築の何%」ではなく、この既存ストックの世代交代のなかから立ち上がる。だからこそ、着工戸数が減っても需要の母数は縮まない。

この需要層は、購入の入り口でさらに2つに分かれる。ひとつは建て替え・新築の層だ。ゼロから安全に設計でき、住宅ローンも活用しやすい。地下に一体でつくり込むタイプと相性がよい。もうひとつはリフォームの層である。いまの自宅に後から備えを足す。予算は現実的で、すぐ動きたいという志向が強い。地上に置くタイプや室内型と相性がよい。同じ「築30〜40年」でも、この2層で求める製品も情報も変わる。市場を語るときは、規模を1つの数字に丸めず、どちらの層の話をしているのかを分けて見るほうが実態に近い。

局面は「認知の形成」から「刈り取り」へ

以上を総合すると、2026年の市場は次の段階にある。制度(予算と基本方針)は出そろいつつあり、需要の構造(ストックの世代交代)も明確だ。いまはその「市場が先に動く」局面の入り口にあたる。

局面をさらに動かす引き金は4つある。個人・法人向けの設置補助、国による認証制度、容積率の規制緩和、そして融資や保険の特約だ。設置補助は、中小企業向けの一部の制度で先行の動きがある。認証は閣議決定に方向性が示されたが、まだ法制化されていない。規制緩和は、現行では地下室の容積率を一部除外する特例にとどまる。金融も、防災対応の住宅ローンは既存だが、シェルターに特化した特約はまだ出ていない。これらがそろう2026年後半以降、市場の空気は一段変わる可能性が高い。逆に言えば、いまはまだ認知が形成される途中であり、発信と足場づくりが効く時期でもある。とくに個人向けの設置補助と認証制度は、動き出せば需要を一気に顕在化させる引き金になる。市場を読む側は、この二つの制度の進み方を注視したい。

市場の全体像は防災・レジリエンス市場マップにまとめた。規模と局面の両面から市場をとらえてほしい。

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